社会保険労務士の仕事
社会保険労務士の仕事
社会保険労務士の仕事は、近頃では、3号業務と呼ばれる労務や社会保険に関する相談、指導業務といったものが増えてきています。
社会保険労務士の仕事のうち、この3号業務と呼ばれる仕事は、関係書類の作成業務である1号業務や代理・代行業務である2号業務と違って、社会保険労務士だけに許された独占業務ではありません。
すなわち、社会保険労務士の資格がなくてもできる仕事なのです。
1号業務の仕事には、行政官庁に提出する届出書や申請書、報告書、審査請求などの書類の作成があります。つまり、対外的な書類の作成です。
また、ほかに、企業の就業規則、労働者名簿、各種労使協定、賃金台帳などの書類の作成業務といったものもあります。こちらは、社内的な書類の作成です。
そして、2号業務としては、1号業務で作成した申請書などを事業主に代わって行政官庁に提出するという代理業務や、事業主に代わって行政官庁に対して陳述、要望、主張などを行なう代行業務があります。
業務のイメージとして例えると、顧問先の会社の従業員の入退社手続きを代行して、書類を作成して関連行政機関に提出するといった感じですね。
これに対して、3号業務と呼ばれる業務は、いわゆる労働コンサルティングといわれるもので、人事や労務に関する相談や指導、アドバイスのことです。
この業務は、その内容において、社会保険労務士の能力がいちばん発揮できる分野ともいわれています。
1号業務や2号業務が社内において行われるようになった昨今では、この3号業務は社会保険労務士の業務で重要な仕事となっていくはずです。
さらに、平成19年4月に新設された特定社会保険労務士は、司法業務も行えることができるようになりました。
司法業務は、賃金の不払いや従業員の不当な扱いなどが原因でトラブルがあった際に、その資格をもって労使の間に入り、トラブルを解決できるというものです。
今後、社会保険労務士の仕事は、どんどん重要性を増すものと思われます。
社会保険労務士の開業手続き
社会保険労務士試験に合格しただけでは、社会保険労務士として仕事をはじめることはできません。
試験合格後は、まず全国社会保険労務士会連合会へ登録することになります。
実際には、各都道府県の社会保険労務士会へ入会することで、全国社会保険労務士会連合会に登録することができます。
ただし、全国社会保険労務士会連合会へ登録するには、ほかに2年以上の実務経験が必要となります。
企業の人事部や総務部などで2年以上の実務経験や労働組合の執行部などで2年以上の実務経験があれば、そのまま登録の手続きをすることができますが、それ以外の場合だと、全国社会保険労務士会連合会が主催する事務指定講習を受講しなければなりません。
この講習では、手続き業務の通信教育が受講できるので、事務手続きに関しての経験ができ、7月に開かれる4日間の講義を受講すれば、2年間の実務経験に代えることができるのです。
正直なところ、講義の内容は受講が義務なので受けるだけで内容としてとても実務で役に立つとは言えない代物です。
一方、各都道府県の社会保険労務士会で実施している開業講座はとても役立つものだと感じました。
開業している先輩社労士の体験談が聞けますし、とても実践的だと感じました。
ライバルであるはずの開業予定の我々に惜しみなくノウハウを提供してくれたことは驚きと感動をいただきました。
また、同期の方とは開業講座が終了しても、勉強会や飲み会などを開催してお互い切磋琢磨することもできました。本当の仲間として心強い信頼関係を築くことができました。
いずれにせよ、まず全国社会保険労務士会連合会に、各都道府県にある社会保険労務士会を通して開業・非開業に関係なく登録の申請をすることになります。
ちなみに登録に際して必要となる書類は、所属する各都道府県の社会保険労務士会によって多少異なるようなので、確認が必要です。
基本的には、登録申請書、社会保険労務士試験の合格通知書、指定講習終了証、住民票の写しが必要となります。
ほかに、写真、所属会入会届、名札作成用の写真なども必要です。
登録に必要な入会金や会費は各都道府県会で異なるので、これも確認しましょう。
内訳としては、全国社会保険労務士会連合会へのものが、登録免許税(収入印紙)、登録手数料。
各都道府県社会保険労務士会へのものが、入会金、会費、慶弔負担金 などとなります。
開業社会保険労務士の場合の登録・入会手続きは、事務所のある都道府県社会保険労務士会で行い、開業ではない社会保険労務士は、勤務先または住所地の社会保険労務士会で行います。
社労士バッチとかも購入できますが、けっこう高額でビックリします。
新規開拓
社会保険労務士会に入会すれば、開業をすることができます。
社会保険労務士は、店に商品を並べて商売を行うわけではなく、基本的には、サービス業という形をとります。
そこで、どのようなサービスが行えるのかをピーアールしていく必要があります。
そのためには、開業前に、まず自分で社会保険労務士として行えることを整理していくことが大切です。
そこでは、もちろん自分の得意分野を前面に出していくことが必要になるでしょう。
たとえば、人事制度構築、退職金・年金相談、就業規則作成、給与計算の外部ソーシング、助成金といった具合です。
次に、事務所を開くことになると、事務所の案内などを作らなければなりません。これは、事業所などを訪問して営業する際には、必ず必要になります。
そして、開業者社会保険労務士では重要となる営業ですが、その方法としては、
飛び込み営業、DM営業、セミナー営業、紹介営業、インターネット営業、などがあります。
飛び込み営業は忍耐力が必要で、DM営業では電話でのフォローなどが欠かせません。
また、業者名簿などを利用してリストを作る手間なども必要になるかもしれません。
セミナー営業は、経営者等を対象にセミナーを開いて、そこを手がかりとして顧問先を開拓するという方法です。セミナーのテーマによっては、大きな需要に結びつくことがあるようです。
紹介営業というのは、文字どおり人脈を通じて顧客を紹介してもらう営業方法です。営業が苦手という人にお勧めの方法といえます。
人脈作りとしては、業界団体や地域団体などの集まりなどを利用するという方法があります。
インターネットを通じての営業も最近では多くなりました。これは自分のホームページを作って、そこから発信していくものです。
これは、開業してから着手するのではなく、開業前から準備しておくことをお勧めします。
とても時間がかかりますし、ホームページの作成が初めてなら(多くの開業者が初めてでしょう)準備にかなりの時間がかかり、検索エンジン上位に上げることだけでも時間とスキル、場合によってはお金もかかります。
また、開業後には、近隣の士業に開業のあいさつ回りをすることもおすすめです。
社会保険労務士の報酬
社会保険労務士の仕事の報酬については、以前は一定の報酬基準というものが設けられており、それに従って請求がなされていました。
これは、全国社会保険労務士会連合会が定めていた報酬基準をもとにして、各都道府県の社会保険労務士会がさらに基準額を決めて、それが報酬基準として社会保険労務士会の会則に記載されていたものです。
そうでないと、仕事欲しさにダンピングする社労士が出てくると、業界としてよくない影響が出てきてしまう側面もあったと思います。
しかし、法改正によって、この報酬部分の規定は削除されて、
現在は報酬については、自由に決めることができることになっています。
しかしながら、現在の社会保険労務士の報酬については、多くの場合、法改正前の金額が用いられているようです。
法改正前の報酬は、その仕事内容によって、顧問報酬、手続き報酬、人事労務管理報酬というように分けられていました。
顧問報酬については相手事業所の人数によって決められ、4人以下の場合は月額2万円、5〜19人で月額3〜4万円、20〜69人で月額5〜8万円、70〜149人で月額10〜13万円、150〜299人で月額16〜22万円、300人以上は協議によるといった具合です。
また、手続き報酬については仕事内容により決められ、関係法令に基づく諸届・報告が1万5000円、許認可申請3万円、就業規則の作成20万円、賃金・退職金・旅費等諸規程各10万円、安全・衛生管理等諸規程は各10万円といった具合です。
そして、人事労務管理報酬についても仕事内容によって決められ、雇用管理や教育訓練については5万円、人事管理や賃金管理、労働時間管理、安全衛生管理は5万円を基本に企画・立案といった仕事は10万円という内容になっています。
社会保険労務士資格は転職に有利か
社会保険労務士の資格というのは、とてもたくさんの活躍の場面があります。
就職という形で働く場合は、一般企業の総務系の部門で書類の作成などを行ったり、会計事務所で顧問先の年金手続きや制度説明、社会保険手続き、労務問題のアドバイスといった担当での活躍も期待されます。
また、市役所や区役所などの行政機関に働きながら税金や年金についての相談を受け、一人一人に合った適切なアドバイスをしていくという仕事もあります。
企業で働いていながらも、将来が不安で安定した職業に就きたいと思った場合には市役所などに転職をすることで、安定している仕事ですから将来性もあるし安心していることができます。
それから転職と言っても会社に転職をするのではなく、自分で独立をして事務所を開設するということもできます。
独立する場合にはそれまでの実績などによって、会社の規模や利用者の数も変わってくるとは思いますが、しっかりとした実績を積んでいるのであれば、独立することによって安定を求めることもできます。
社会保険労務士の資格というのは転職にホントに有利で、今では社会保険労務士が必要ないという企業がほとんどありませんから、どこにいても求人情報が見つかるような状態となっています。
以前は社会保険労務士が必要な会社側としても、雇う社労士は1人でしたが、社会保険労務士の仕事というのは忙しく、休みもしっかりとしていないので複数の社会保険労務士が交代で勤務をしていくということも多くなってきています。
ですからその分、求人情報も増えてきているので、転職にもとても有利だということになりますね。