社労士選択式攻略のコツを学ぶ
選択式問題の解答テクニックを事例で学ぶ
ここでは、まず選択式問題の基本的な解き方を解説していきます。
次に、未知の問題が出題されたときに、いかに合格点を勝ち取るのかという視点から、さまざまな手法を解説しました。
これらの手法は、すでにどこかで使われているテクニックではなく、私が独自に考えた100%オリジナルです。
これらの手法を体得されれば、本試験では強い味方となってくれるはずです。
なお私は合格後10年以上経っており、本試験受験に必要とする知識は殆どなくなってしまった状態です。
では、具体的に過去に出題された問題を取り上げて説明をしていきましょう。
<事例1> 出典:「社会保険に関する一般常識」
この出題文は、数年前の白書からの出題であったため、ほとんどの受験生が初めて目にする文章でした。
私の場合は、知識で解けたものは常識の範囲で1問しかありませんでした。そこで、解答テクニックを使うことによって解いてみました。
結果は、4問正解でした。
設問・問題文はつぎのとおりです。
社会保険に関する一般常識
[問5] 次の文中の1234の部分を選択肢の中の適当な語句で埋め,完全な文章とせよ。
我が国の社会保障制度の発展過程をみると,社会保障制度の範囲,内容, A が大きく変化するとともに,社会保障の B の向上や規模の拡大,新しい手法の導入,サービス提供主体の拡大等が進んできている。
A の変化でいえば,社会保障制度審議会の1950(昭和25)年勧告の頃は, C が社会保障の大きな柱であったが,その後の国民 D の成立,医療や福祉サービスに対する需要の増大と利用の一般化等から, E に限らない A の普遍化,一般化が進んできている。
選択肢
@ 家族形態 A 健康保険法 B 所得水準 C 高齢者介護 D 対象地域 E 医療費
F 児童手当 G 生活保護 H 生活水準 I 低所得者層 J 被保険者 K 健康保険組合
L 福祉六法 M 老人医療 N 皆保険・皆年金 O 対象者 P 特定地城 Q 児童 R 消費水準 S 給付水準
・設問は最初に全部読み同じ内容であることを確認する。
これによって、次の問題の設問は読む必要がなくなり時間の短縮をできるとともに「引っかけ」が回避できる。
さあ、ここまでは序章です。いよいよ本題の問題文に入っていきましょう。
しかし、またここで質問です。
回答すべき設問の数は A から E の5箇所ですね。
では、1234の部分は全部で何箇所あったでしょうか。5箇所以上あることにお気づきになりましたか。
そして、設問 A の箇所は全部で3回出ていることにお気づきになったでしょうか。
複数回出現している設問 A は、他の項目以上に慎重に語句を選ぶ必要があります。ここが埋まればいっぺんに3箇所のキーワードが埋まることになるからです。
また、一般的に複数回出現している設問はその問題自体の難易度は別にして解きやすいということがいえます。
なぜなら、何度も出てきているので前後の文章から語句を当てはめていく場合に、キーとなる言葉なり文章が何度も出てくることになるからです。
問題にとりかかる際には、問題文を読む前にこれだけ見当をつけてから問題に取り掛かるのと、あるいはいきなり設問 A から順番に解いていくのでは、どちらの正解率が高いか、もうご理解いただけたことでしょう。
・複数回出現している問いはその文章のなかでも重要なキーワードなので、まずその問いにアプローチする。
では、いよいよ問題の中身に取りかかります。
できれば選択肢は見ることなく、あてはまる語句が頭に浮かんできて記入できればいいのでしょうが、ここで取り上げようとしているのは、それでは対処できない(語句が思い浮かばない)場合の対処方法です。
設問 A から設問 E まですべて自力では埋められないという前提で選択肢の中から最適な答えを選ぶ方法について述べていきます。
では、具体的に問題を解いていきましょう。
(なお、便宜上、 A の3箇所それぞれに(○ア)〜(○ウ)の番号を振ってあります。)
我が国の社会保障制度の発展過程をみると,社会保障制度の範囲,内容, A (○ア)が大きく変化するとともに,社会保障の B の向上や規模の拡大,新しい手法の導入,サービス提供主体の拡大等が進んできている。
A (○イ)の変化でいえば,社会保障制度審議会の1950(昭和25)年勧告の頃は, C が社会保障の大きな柱であったが,その後の国民 D の成立,医療や福祉サービスに対する需要の増大と利用の一般化等から,
E に限らない A (○ウ)の普遍化,一般化が進んできている。
選択肢
@ 家族形態 A 健康保険法 B 所得水準 C 高齢者介護 D 対象地域 E 医療費
F 児童手当 G 生活保護 H 生活水準 I 低所得者層 J 被保険者 K 健康保険組合
L 福祉六法 M 老人医療 N 皆保険・皆年金 O 対象者 P 特定地域 Q 児童
R 消費水準 S 給付水準
まず A が3箇所も出てきますので3箇所それぞれの前後の文章を読み、最適な答えを探る作業に入ります。
そして、その作業の際には、穴になっている箇所の前後の語句がキーワードになりやすいので、○で囲む、あるいは下線を引くなど工夫してクローズアップしておきます。
また、語句と語句との関連性をはっきりさせるために、図式化してみると、わかりやすくなります。
特に、文章が長かったり、わかりにくい表現がされているときに図式化してみると、いっぺんに構図がわかることがあります。
<書込みと図式化で語句の関連を明確にしておく>
A に入るべき語句としては、 A (○ア)の前にある<範囲><内容>という表現がポイントだということがおわかりになると思います。
<範囲><内容>と同列で列記されるにふさわしい言葉を選択肢からよく吟味すると、O対象者以外にはあまり考えられません。
あえて選ぶとしたらD対象地域、J被保険者ですが、よく読むと(○ア)に被保険者という語句はふさわしくありませんし、(○ウ)にD対象地域という語句はふさわしくありません。
このあたりは、慎重に選択肢を吟味していけばほぼ正解肢に辿りつけるでしょう。
B についても、並列で表現されている文章が、「社会保障の規模や内容」について触れているので、それ以外に向上させる要素としていは、「社会保障の質の向上」であることが推測できます。
したがって、 B についてはS給付水準と推測できます。
C については、初めて(?)知識を問う問題のようにみえます。
ここでのポイントは、「社会保障制度審議会の1950(昭和25)年勧告」という表現です。これを読んで、「難しい表現が出てきたな」「困ったな」と思うと、出題者の思うツボということになります。
ここでは、「1950(昭和25)年」という年代さえわかればよく、「社会保障制度審議会の勧告」などということは問題を解く際に何の意味もありません。そこにまず気づくかどうかです。
それに「社会保障制度審議会の勧告」といわれても誰もわからないだろうと思うことです。
わたしは、 C に入る可能性のある候補として、
まずA健康保険法C高齢者介護G生活保護K健康保険組合M老人医療を選択してみました。
よく読むと、社会保障のなかのどういう制度を指すのかを聞いていることがわかります。
したがって、Aの健康保険法は法律名なので×だということがわかります。(健康保険か健康保険制度という表現なら候補には残りますが・・・)
次に、C高齢者介護とM老人医療はここ数年の時代になって問題化してきたテーマなので、これは該当しないと見当がつきます。
すると、残る選択肢はG生活保護かK健康保険組合になります。
D については、A健康保険法かN皆保険・皆年金のどちらかしか選択の余地がないように思えます。
確率は50%です。
E については、難問だと思いました。
当てはまる候補が多く、絞り込みが難しいという印象です。ただ、よく読むと、 C の語句に近い表現があてはまることがわかります。
ここで、 C と E は相互に似た表現の語句だと見当がつきました。
そうすると、 C はK健康保険組合だと E に該当する語句を入れることができません。したがって C はG生活保護が正解肢ということになります。
E の候補としては、B所得水準I低所得者層を挙げました。確率は50%です。
以上がわたしの解答の流れです。
確実な正解肢は3問。残りの2問は確率50%でした。うまくいけば5問、確率的には4問の正解でした。
出題文はまったく初めて目にするもので、かつ知識もほとんど当てにしていません。
それでも足切りは回避できました。
いかがでしょうか。
ちなみに、正解は以下のとおりです。
我が国の社会保障制度の発展過程をみると,社会保障制度の範囲,内容, A =対象者が大きく変化するとともに,社会保障の B =給付水準 の向上や規模の拡大,新しい手法の導入,サービス提供主体の拡大等が進んできている。 A =対象者 の変化でいえば,社会保障制度審議会の1950(昭和25)年勧告の頃は, C =生活保護 が社会保障の大きな柱であったが,その後の国民
D =皆保険・皆年金 の成立,医療や福祉サービスに対する需要の増大と利用の一般化等から, E =低所得者層 に限らない A =対象者 の普遍化,一般化が進んできている。
<事例2> 出典:「労働基準法及び労働安全衛生法」
労働基準法及び労働安全衛生法
[問1] 次の文中の1234の部分を選択肢の中の適当な語句で埋め,完全な文章とせよ。
1 労働基準法第92条においては、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される A に反してはならないとされており、また、同法第93条においては、就業規則に定める基準 B 労働条件を定める C は、その部分については無効とされ、この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるとされている。
2 いわゆる過労自殺に関する最高裁判所のある判決によれば、「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法第65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者 D を適切に E するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生することをも目的とするものと解される。」と述べられている。
選択肢
@ 管理 A 行政官庁の命令 B 行使 C 事実たる慣習 D 整備 E 待遇 F 短縮 G と相違する H 内規
I に違反する J に対する人事権 K に達しない
Lの就業環境 M の従事する作業 N の労働時間
O 労使慣行 P 労使協定 Q 労働協約 R 労働契約
S を上回る
この問題については、 A 〜 C が比較的基本的な知識を問う設問であったため、この3問は全問正解した受験生も多いでしょう。
実際に、ある解答判定集計の結果では、 A 〜 C の正解率はいずれも90%以上という結果が出ています。
一方、 D と E については、この条文をしっかり記憶していた受験生は皆無だったと思います。
ほとんどの受験生は、前後の文脈から推測して解答せざるを得ませんでした。
前記の解答判定集計の結果をみると、特に D の正解率は9%です。
この年の選択式設問の中では、飛び抜けて低い正解率でした。
この問題をここに事例として挙げましたのは、このように、基礎中の基礎と思われる設問が出る一方で、ほとんどの受験生が知らない設問が出たりすることを実感していただきたかったためです。
幸い、この科目に関しては前半の3問が容易な設問であったため救われましたが、もし前半の3問が確実ではなかった場合には、
D と E のうちどちらかで確実に1問は正解正解しなければいけないことになり、一挙に難易度が上がります。
これが選択式問題のとても怖いところです。相当に受験準備をしてきた方でも、簡単に基準点を割ってしまう可能性があるのです。
では、 A 〜 C では確実に3問正解を拾えないという場合を想定して D と E の問題を解いていきたいと思います。
労働基準法及び労働安全衛生法
1 ―略―
2 いわゆる過労自殺に関する最高裁判所のある判決によれば、「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法第65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者 D を適切に E するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生することをも目的とするものと解される。」と述べられている。
選択肢
@ 管理 A 行政官庁の命令 B 行使 C 事実たる慣習 D 整備 E 待遇 F 短縮 G と相違する H 内規
I に違反する J に対する人事権 K に達しない
Mの就業環境 M の従事する作業 N の労働時間
O 労使慣行 P 労使協定 Q 労働協約 R 労働契約
ここでも、まずテクニック3を使って候補の選択肢を絞っていきましょう。
・穴になっている箇所の前後の語句がキーワードになりやすいので、○で囲むなり下線を引くなりしてクローズアップしておく。特に、並列で出てくる語句は正解に似た表現であるので注目する。
・語句と語句との関連性をはっきりさせるために、図式化してみる。
この D と E にかかる文章を図式化してみますと、「過労自殺の防止」についての記述だとわかります。
そして、「過労自殺」の原因としては、「長時間労働」と「疲労・心理的負荷」があるとしています。
また、過労自殺を防止するための対策として、
・労働基準法→労働時間の制限
・安全衛生法→ ○健康に配慮
●従事する作業を管理
●労働時間を管理
●就業環境を整備
と定められている
という文章構成になっています。
このように図式化することで、ただ文章を読むよりはるかに文章の内容が整理できます。
上記の図式化したところの黒丸(●)の箇所が組み合わせとして考えられ、この3つの組み合わせの、どれを選択するかを考えることになります。
組み合わせは、
1.労働者の従事する作業を適切に管理
2.労働者の労働時間を適切に管理
3.労働者の就業環境を適切に整備
この3つです。
次に、
・複数の選択肢が候補に上がったら、どの語彙が最も文章の流れとして適切かを何度も検証する。
・最低3箇所の正解が必要なので、3箇所正解を割る可能性のある科目に全精力を注ぐ。
の2つのテクニックを使います。
最初の設定で、 A 〜 C では確実に3問正解を拾えないという場合を想定していますので、ここでは確実に1箇所は正解に導かなければいけないケースです。
ここで、1.か2.の組み合わせであれば、ともに管理という選択は共通していますので、確実に1問は正解を拾えることになります。
そこで、3.が正解の組み合わせでないことがわかればいいことになります。
そしてさらに検証してみます。
「過労自殺の防止」という観点からすると、いくら就業環境を整備しても、実際に過重労働させれば意味はありません。
ここでは、事業主に過重労働させないことを法で規制していると考えられます。さらに、「作業の内容等を特に限定することなく」と書いてあるので、就業環境うんぬんという内容ではないことがわかります。
したがって、3.労働者の就業環境を適切に整備
という組み合わせが正解である可能性はかなり薄いといえるのです。
あとは、1.あるいは2.の組み合わせの、どちらかを選べばよいことになります。
ちなみに、私は2.労働者の労働時間を適切に管理を選びましたが、正解は1.労働者の従事する作業を適切に管理でした。
いかがでしょうか。
なお、正解は以下のとおりです。
1 労働基準法第92条においては、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される A =労働協約 に反してはならないとされており、また、同法第93条においては、就業規則に定める基準 B =に達しない 労働条件を定める C =労働契約 は、その部分については無効とされ、この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるとされている。
2 いわゆる過労自殺に関する最高裁判所のある判決によれば、「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法第65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者 D =の従事する作業 を適切に
E =管理 するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生することをも目的とするものと解される。」と述べられている。
もうあと少しで選択式のコツはつかめます。次に進んでください。