直前対策 社労士試験当日に120%の実力を引き出す<択一式編>
【はじめに】
このページは、社労士試験の本試験で1点で泣かないための直前対策について解説したものです。
直前期の勉強のしかた、本試験での解答テクニックにテーマを絞りました。
本番が近づくと、多くの受験生はいかに大量の知識を詰め込むかという点にどうしても目が奪われ、いかに本番で合格点を取るかという視点を忘れてしまいがちです。
合格するために大切なのは、
- 「いかに大量の知識を身に付けるか」ではなく、
- 「いかに効率よく『合格力』を身に付け確実に合格できるか」
を、きちんとした戦略をもって臨むということです。
ここでは、解答時間の短縮方法など、わたしの知りうるノウハウを余すことなく盛り込み、合格するための手法をお伝えしています。
わたしは通信講座で合格したのですが、勉強していた当時はこれらの方法をまさに手探りで考え出していくしかありませんでした。
ここでは、わたしのような回り道をみなさんが少しでもしなくても済むよう、最短で合格への道を進んでいただきたいと願いしました。
自分で一から試行錯誤しながら進むより、先人の引いてくれたレールを一直線に進むほうが目的地にははるかに早く到達できるはずです。
もちろん、ここでご紹介する手法をすべて実行する必要はありません。
みなさんの置かれた環境に合わせ、取り入れてみたいと思われる点を取り入れていただければと思います。
なお、これからご紹介する手法はそれほど時間をかけることなく身に付けることができます。
事前に何回か練習が必要ということもないでしょう。
なぜなら、これはテクニックというよりも手法・考え方だからです。
択一式試験についてですが、年々、問題文は長文化が進んでいます。
そのため、制限時間内で回答していくことがより困難になってきています。
このことから、問題を早く解くことは合否に直結してきますが、一方、いくら早く解くことができても、問題文を雑に読み正解率を下げては意味がありません。
受験の指南書や合格体験記ではあまり強調されていないように感じますが、「早く正確に解く」テクニックは、多くの受験生は意識していないにも関わらず、実はそれほど難しいものではないのです。
次に、選択式試験について。
選択式は5問中3問以上正解という厳しい合格基準がありますので、例年救済措置があるといいながらも、とても神経を使う箇所であるといえます。
かなりの実力者が不合格になる代表的な事例は、この選択式の足切りにあります。
ほかにも、選択式で怖いのは、
- だれも読んだこともないような問題文から出題される
- ひとつ間違えると、続けて失点する可能性がある
こういったリスクがあります。
このようにとてもやっかいな選択式ですが、確実な対策はないとしても、できるかぎりリスクを回避する「守り」の戦法で足切りを回避したいところです。
選択式の問題には、択一式が解ける実力が付けば自然と解けるようになる問題と、いくら知識を積み重ねても解答困難な難問に大きく分かれます。
後者の回答困難な問題は、選択式の問題演習をいくら積んでもなかなか解けるようにはなりません。
そのために、選択式特有の特徴をつかんだ解答テクニックが必要になるのです。
ところが、これに対する対策を教えてくれる受験予備校も実はあまり存在しないので、結局、対策をとらないで本試験に臨む受験生がほとんどといっていいでしょう。
私はこれまでの選択式の問題をみて、あらためて選択式の怖さを知ると同時に、選択式という問題形式の特徴をちゃんと把握しているかどうかで大きく結果が違うことを再認識しました。
これはまさに、いくつかのポイントを知っているか、知らないかだけ。 読解力とは無縁のところで決まるのです。
このページでは、択一式の解答テクニックをお伝えしていきます。
1.問題を早く解くテクニックとは?
問題を早く解くことはとても重要です。
しかし、受験の指南書や合格体験記であまり強調されないので、とても不思議に思っていました。
もし択一式の解答時間が1時間長くなったとしたら合格ラインが5点くらいアップするのではないでしょうか。
私の紹介するテクニックを使うと、時間が足りなくなるということはまずありません。十分見直しまでできるはずです。
せっかくひとの何倍も勉強しても時間不足で失敗したとしたら泣くに泣けません。試験は時間との戦いです。
せっかくの知識があっても時間切れで解答できなかったとしたら、それだけのために1年を棒にふることになったら・・・。
「問題を早く解く」ということは、受験時代の私の大きなテーマでした。
実際に本試験を受けたことがある方や模擬試験を受けた経験のある方はもうおわかりでしょう。
制限時間を気にすると、どうしても焦って問題を解くことになります。
その結果、問題の流し読みをしてしまったために、本来の実力では発揮できずに、正解可能であった問題を落としてしまう事態は十分あり得ることです。
もし、高速度で且つ問題を流し読みすることもなく解答できれば、時間不足に焦ることもないでしょう。
正解に辿りつけるか否か、この違いは言うまでもなく非常に大きいことなのです。
出題側からしても、文章量を増やせば単純に正解率は下がりますから、落とす試験である社労士試験では、問題の分量を増やすということはとても有効な手段だということがいえます。
それでは、より高速度で問題を解くにはどうすればよいのでしょうか。
私は、ある合格体験記の「問題を早く解く手法を考え出しそれを実践したので時間不足に悩まされることはなかった」という趣旨の記述に触れ、それがずっと気になっていました。
そこにはさらに、「ここで公表してしまうと、次年度からは使えなくなる恐れがあるので書きませんが・・・」という、とても気になることも書いてありました。
私が、その方と同じ手法を見つけ出せたのかどうかわかりませんが、今から述べる手法でも十分目的は達成できると思います。
手法は至って簡単ですので、試験当日すぐ使えるものです。
まず、社労士試験の設問を思い出してください。問題文ではなく、設問のほうです。
ほとんどの設問は、「次の文章のうち、誤っているものを選べ」か、「次の文章のうち、正しいものを選べ」かのどちらかでしょう。
ここでのポイントは、「次の文章のうち、誤っているものはいくつあるか選べ」あるいは「次の文章のうち、正しいものはいくつあるか選べ」というものではないという点です。
ここに大きなポイントが隠されています。
つまり、「次の文章のうち、誤っているものを選べ」という設問は、
仮に1問しか正誤の判断ができず、他の肢はすべてわからない状態でも、正解を導き出すことが可能だということです。
これが、「次の文章のうち、誤っているものはいくつあるか選べ」あるいは「次の文章のうち、正しいものはいくつあるか選べ」という設問になると、全部の肢がわからないかぎり、確実に正解に辿りつくことはできません。
上の設問より下の設問のほうがはるかに難しいことはおわかりいただけると思います。
つまり、社労士試験では、司法試験の短答式のような後者の設問形式ではなく、誤っている選択肢、正しい選択肢は問題文のなかでひとつしかありません。その一つを選ぶだけでいいのです。
このことは同時に、もうひとつのことが言えます。
それは、
必ずしも5肢すべてを読まなくてもよいということです。
ここは重要なので再度述べます。
「問題を解くときに、すべての問題文を読まなくていい!」のです。
うまくすれば、設問の最初の選択肢が正解だとわかれば1問解くだけで次の設問に移れるのです。
最初は不安があるかもしれません。
しかし、この手法で解答してゆけば後になって時間の余裕ができますから、あとでじっくり見直しもできるのです。
ただし、あとで見直しができるからといって、安易に解くのは絶対に避けなければなりません。
すべての問題文を読まずに解けた問題は、基本的には必ず正解になる問題なので、判断した論点は線を引いておくなり一字一句見落としのないよう注意しながら解答してださい。
何はともあれ、まずは高速で問題をすべて一巡することに専念しますが、ここでは、あとで見直しができるように回答の痕跡を残しておくということが重要です。
この点はあとで詳しく解説していきます。
また、細かいところですが、マークシートへの転記はいつ行うのがよいのでしょうか。
わたしの場合は、各科目ごとに転記していきました。
全部解き終わってから一挙にマークシートへ転記しようという方もみえるでしょうが、けっこう時間がかかることを覚悟しておいて下さい。
最低、10分はかかると思います。
1問ずつマークシートへ転記していてはあまりに効率が悪いので、自分はどのやり方が合っているのか事前に決めておかれるといいでしょう。
次に、回答する科目の順序ですが、通常は得意科目あるいは易しいといわれる科目から入っていく場合が多いと思います。
このときに注意したいのは、受験した年によって科目の難易度が変わる場合があるということです。
1科目に30分以上かかるようなら、その科目はかなり難しくなっているといえます。
足切りも大事ですが、総得点も大事です。
1科目に時間がかかりすぎていると思ったら、次の科目にひとまず移るということも状況によって判断して下さい。
やさしい問題だったのに、「時間がなくて解けなかった」というケースはかなり多いようです。
2.ケアレスミスをいかに極力なくすか
実力面では正解可能な問題なのにケアレスミスで失点してしまうほど悔しいことはありませんね。
その上、その失点があったために、足切りにつながったとしたら悔やんでも悔やみきれません。
「ケアレスミスを防ぐ」というのは大きなテーマですが、どうしたら防ぐことができるのかということに対する私の答えは至って単純です。
まず、私の解いた問題用紙は他の受験生と比べるとあきらかに違います。
それは、・・・書き込みがいっぱいあるのです。
「問題用紙はきれいに使いなさい」とはどこにも書いてありませんから、本試験ではどれだけ書き込みをしても気にする必要はありません。
逆に、これをすることによって、さまざまな効果が出ます。
まず、前述の手法で問題を見直す時間はかなり残るとは思いますが、見直しをする時間はどうしても限られています。
そのために、最初に解いたときの思考の痕跡を具体的に残しておかないと、見直しをしたときに、また一から設問に取り組まなければなりません。
具体的な流れをご紹介しましょう。
さきほども述べましたが、ほとんどの設問は、「次の文章のうち、誤っているものを選べ」あるいは「次の文章のうち、正しいものを選べ」のどちらかなのです。
そこで、設問の書かれた箇所に「次の文章のうち、誤っているものを選べ」であれば○を、「次の文章のうち、正しいものを選べ」であれば×をそれぞれ大きく書き込みます。
次に問題文に向かうわけですが、誤っている箇所を見つけたら、下線を引き、そこに「×」の印を付けます。
疑わしい箇所も、同様に下線を引き、「?」の印をしておきます。
また、重要だと思われるキーワードにも印を付けておいたり、図式化したりします。
多くの方は消去法で問題を解いていくことになるのでしょうが、こうして書き込みをしておけばおくほど、見直しのときに正解肢を選ぶときに正誤の判断がしやすくなるのでオススメします。
ちなみに、消去法で問題を解くときは、皆さんはどのような印を付けて解答したら良いとお考えになりますか。
わたしの場合は、全部で6段階の印を使っていました。
それは、「◎」・「○」・「△」・「×」・「××」・「?」の6種類です。
社労士試験は勉強範囲がこれだけ膨大です。
本試験では各々多少の差はあれ、「まったく知らない」問題や「判断に迷う微妙な」問題はどうしても出てくることでしょう。
従って、少しでもたくさん区分を作って微妙な違いを自分なりに「格付け」するようにしていました。
普段の学習のときは、復習のことも考えて、あまり問題集の問題文に○だの×だのと印は付けないだろうと思います。
しかし、本番のときはそんなことは考えなくていいわけですから、とにかく問題を解く際の思考の痕跡を残しておいた方が解きやすくなるのです。
また、正解だという確信の持てた設問には問題文の文頭あたりに自分がわかる表示(例えば◎を記すなど)(以下「確実チェック」という)をしておくと後で役に立ちます。
それは科目ごとの足切り対策にも繋がります。
その根拠はというと、択一式の場合、各科目で原則4点以上という基準があることに基づきます。
あなたの問題用紙に確実に正解だという印が4問以上ついていれば、その科目については足切りを心配することはないワケです。
そのことによって、確実チェックが基準点に足りない科目に集中し、力を注ぐことが可能になります。
このようにして、問題を解くとき、見直しのときにとても役に立つのが「書き込み」なのです。
ぜひ試してください。
なお、そんなことをしていたら本当に高速解答などできるのだろうかとの懸念を抱かれた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ご安心下さい。
私の経験では、実際に問題を解いていく流れのなかで書き込みをしていきましたので、ほとんど問題にはなりませんでした。
3.一度解答した問題を一定の法則で直す
私は合格体験記をかなりたくさん読んだほうだと思いますが、「一度解答した問題は極力直すな」という体験記にはかなり遭遇しました。
みなさんもそのように書かれた合格体験記をお読みになったことがあるかもしれません。
私にはその理論的な裏づけはよくわかりません。
私の実例を挙げますと、本試験では6問の解答を直しました。
結果は、
・直しても直さなくても不正解だったのが2問(まったくわかっていなかったということですね!)
・直して正解だったのが4問
というものでした。
結果として、回答を見直し変えることによって、4点上積みすることができました。
たかが、4点と思われるかもしれませんが、本試験で1点の中に何百人という受験生がいるわけですから、4点はある意味、とてつもなく大きな点数といってもよいでしょう。
たまたま、点数が上がったというわけではなく、確率的に見直しているので、確実に得点が増える方法でもあります。
直したほうが正解の確率が高いと確信した問題だけを書き直した結果なのです。
一番悔いが残るのは、最初は正解だった解答を直して不正解にしてしまうことでしょう。
まして、そのために足切りにかかったとしたら、泣くに泣けません。
直し方にもポイントがあるのです。
わたしは、ただ一定の法則に従って解答を直しただけなのです。
一定の法則に従うのなら、一度解答した問題を直したって構わないと考えます。
では、一定の法則とは何なのでしょうか。
それは、
「確実に得点アップにつながる可能性のあるものだけを直す」
ということです。
では、具体的には、どういう基準でもって直してよい問題だと判断するのがよいのでしようか。
私が訂正するときの基準にしたのは次のとおりでした。
@.解答を2つまでに絞っている場合
正解に近いところまできている問題は、まったく絞れていない問題よりはるかに正解の確率が高いわけですから、そのような問題に照準を絞って時間をかけて解答するということです。
最初に書き込みがしてあるので、どれを見直せばいいかは明らかになっているはずです。
まず、こうした問題を優先的に見直していくことに専念します。
このときには、科目の足切りも意識して「確実チェック」のついた問題が基準に達していない場合はその科目を重点的に時間をかけて見直さなければなりません。
また、先ほども述べたような、「次の文章のうち、誤っているものを選べ」という設問は、もうひとつ解答しやすいという要素があるので注目します。
といいますのは、
「明らかに誤っている」選択肢を選ぶほうが、「明らかに正しい」選択肢を選ぶより解答しやすい
ということです。
「明らかに誤っている」場合は論点がはっきりしているのに比べ、「明らかに正しい」のかどうかは「原則は正しいが例外もありえる」「問題文の微妙な表現が読み取りにくい場合がある」などの要素が含まれてくるからです。
「誤っているものを選べ」という設問のときに、「明らかに誤っている論点が明確」になっているのであれば、正解率はかなり高いといえます。
A問題文・設問の意味を取り違えている場合
自信をもって解答した設問のなかでも、問題文の読み間違いなどで失点することは避けたいところです。
正解だという確信の持てた設問で「確実チェック」が入っているものは、確実に得点したい設問です。
したがって、このような設問こそ慎重を期して、再度、設問や問題文を読んでみると、うっかり読み間違えを防ぐことができます。
こうした基準を持たずに見直しをしはじめると、次々に気移りがしてしまい、むやみに時間を費やし、正解に近かった問題を捨ててしまうということが起こりえます。
あるいは正解だったところを不正解の肢に替えてしまうという最悪の事態を招くことがあります。
「足切りを常に念頭に置いて、正解の確率の高い問題から順に見直す」
これを意識して問題を解いて下さい。
また、余談ですが、本試験では長時間にわたり緊張感を持続し集中していかなければなりません。
想像以上に疲れる作業の連続で、時間が経つほど精神的な余裕がなくなりがちです。
そこで、試験途中に必ずトイレ休憩を取ることを自分で決めておくというのも一つの手です。
私も、事前にトイレ休憩に行くことを決めていました。ほんの数分のことです。
この時間がもったいないと思われるかもしれませんが、逆に一息つくことで精神的にはかなりスッキリします。
仕切り直しの気分になれ、経験上、かえって効率は上がります。(すべての人に当てはまるとは限りませんが・・・)
択一式の対策のコツはいかがでしたか?
では、次からは社労士試験の関門ともいえる選択式攻略のコツについて学んでいきましょう。